10年ひと昔。
10年後の2035年には「あの頃は良かった」としみじみ思う日が来るのでしょうか。
今まさにその転換点に差し掛かっています。
そしてそれは唐突に。
我らがANA、全日空最大の飛び道具であったアップグレードポイントが2026年度をもって終了となります。
繰り返します。
ANAアップグレードポイントは2026年度末で終了。
アップグレードポイントとは
今更ですが念のため、アップグレードポイントとはANAからのプレゼントです。
SFC(スーパーフライヤーズ)会員とダイヤモンド会員などのプレミアムメンバーがたくさん飛行機に乗ると、乗ったマイル数に応じてもらえます。
例えば今年2025年の私ぶりぶりマイラーの場合で10万マイル搭乗しているので40ポイントという感じです。

実際にはこの40ポイントと合わせてSFC会員だからといって+4ポイント。
ダイヤモンド会員だからといって+16ポイント(選択式特典で選んだ場合)の合計60ポイントが毎年プレゼントされていました。
じゃあ60ポイントってどの程度の価値なの?
それは目安としてしか伝えられないのですが、お得を全面に出すとざっくり200万円ほどの価値になりうるポイントであります。
東京⇔ヨーロッパのアップグレード対象運賃エコノミークラスを30万円で購入したとします。
20ポイントのアップグレードポイントで往復ビジネスクラスに変更可。
保有ポイントが60ポイントならヨーロッパ3往復分(30万×3往復=90万円)です。
一方ビジネスクラスを普通に購入するとZ運賃(ビジネスクラスで一番安い運賃)でも東京⇔ヨーロッパは100万円程かかります。
1往復当たりの差額は70万円なので、3往復すると210≒約200万円というわけです。
アップグレードポイントはいつまで貯まる
この200万円相当という強力なANAのサポートがあったからこそわたしはこれまでダイヤモンド会員を快適なビジネスクラスで続けることが出来ていました。

それがなんの前ぶれもなく無くなってしまうことになります。
いつなくなるのか。
2026年度の提供をもって終了します。
アップグレードポイントは1月から12月の間に搭乗したマイルに応じて付与されますが、それが付与されるのは翌年の4月です。
よって2026年4月に付与されるアップグレードポイント(2025年搭乗分)が最後ということになります。
アップグレードポイントはいつまで使える
今年はまだ3か月あります。
じゃあ3か月の間に飛行機に乗りまくって翌年度にもらえるアップグレードポイントを貯めておけるのでは?!と思ったあなた、残念ながらアップグレードポイントは1年で消えます。
2026年4月にもらうアップグレードポイントは2027年の3月末に消滅してしまうのです。
そしてそこで消滅したアップグレードポイントをもって、ANA独自のこの素晴らしいシステムは幕を閉じることになります。
ではこれから迷えるダイヤモンド会員はどうすればよいのか。
マイルでアップグレードに変更
どうしようもない、というのが実際のところでありますが、アップグレードが出来なくなるわけではありません。

ANAのリリースによると2026年5月19日からは国内線もアップグレード(エコノミークラスからプレミアムクラス(ファーストクラス))にマイルが利用できるようになると記載があります。
※国際線は現在もマイルでアップグレードできます。
※プレミアムクラスはファーストクラスに呼称が変わります。
しかしプレミアムクラスの席数が極端に少ない国内線においてはマイルが利用できるできないという以前の問題であり、プレミアムクラスが設定されていても空席がないことがしばしばであります。
そして本命の国際線です。
わたしについての話になりますが、毎年ありがたく頂く60ポイントのアップグレードポイントではダイヤモンド修行には到底足りません。
そのため足りない分のビジネスクラス利用にはマイルを利用しています。
ヨーロッパ路線などの遠距離だと28,000マイルを消費してエコノミークラスからビジネスクラスへアップグレードしてもらいます。

そもそも「ダイヤモンド会員」や「現役プラチナ会員」以外のSFC会員や平マイレージ会員だとビジネスクラスへのアップグレードが空席待ちのまま落ちてこない(アップグレードされない)ということが往々にしてあるかと思いますがそれはまた別のお話。
これからは片道28,000マイルを利用してアップグレードするということが既定路線になるわけです。
ANAアップグレードポイント終了の弊害
アップグレードポイントの終了は私たちダイヤモンド会員含むプレミアム会員には最悪の改悪であると言えます。
前述のとおり200万円相当のベネフィットがなくなるわけですから。
そしてこれ以外にもアップグレードポイント終了の弊害は多々あるから大変です。
マイルでアップグレード
マイルでアップグレードできるという選択肢が残っても実はまったく喜ぶことが出来ません。
なぜならアップグレードポイント60ポイントを使用してビジネスクラスに6回搭乗してもダイヤモンド修行を完了するには旅程が足りません。
そこでビジネスクラスで快適な修行を継続するのに足りないアップグレードポイント分は年間6万~9万マイルを使って補っていましたが、これがいっきに年間24万~27万マイルに増加するからです。
ダイヤモンド会員としてわたしが純粋に飛行機の搭乗で得ているマイルは年間おおむね20万マイル程度です。
ぜんぜん足りないんです。
となるとダイヤモンド修行の旅程のうち何カ国かはエコノミークラスで飛ばなければならない場面が出るということであります。
さらに悪いことに、ダイヤモンド会員がダイヤモンド会員である間はマイルの有効期限がなくなるというのに、これではそもそもマイルが一切貯まりません。
これはアップグレードなしでビジネスクラスに乗ることが出来るリッチピープルを相手にした商売へと舵を切ったことが顕著にわかります。
アップグレード目当てのダイヤモンド会員はいらんというわけです。
ANAラウンジの利用
ステータスとか同行者の人数とかいろいろありますが、すごくざっくり言うと国内線のANAラウンジではアップグレードポイントを2ポイント利用することで同行者もラウンジに入ることができます。
国際線でも3ポイント~4ポイントのアップグレードポイントを利用することでANAラウンジ・ANAスイートラウンジに同行者が入れます。
もちろんアップグレードポイントではなくマイルの利用でも同行者を入れることは出来ます。

しかし毎年ダイヤモンド修行しているような人でなければ40ポイントとか60ポイントものポイントはもらえません。
そのためスーパーフライヤーズ会員としての4ポイントだけとか、年に1,2回の搭乗で6ポイントとかの方も多いと想像できます。
そういう方はアップグレードポイントの使い道がなかなか無いのでラウンジに家族などの同行者を連れていくという使い道が良いのですが、これが出来なくなります。
これは人によっては痛いです。
国際線のスイートラウンジに同行者をマイルで入れると1人5000マイルですから。
マイルを潤沢に持っていない家族連れはラウンジに入るなというわけです。
ダイヤモンド会員向け選択式特典
ANAダイヤモンド会員になると1年に1度ANAからプレゼントがあります。
詳しい内容はこちら↓でご覧になれます。


この9種類から選択することが出来る素敵なプレゼントの中にはアップグレードポイント16ポイント(12+4)という大盤振る舞いな選択肢があります。
これがなくなることはまず間違いありません。
無くなる代わりに選択肢が増えるとも思えないので、スカイコイン8万円分(6万+2万)などの中から選択することになりそうです。
頂けるだけありがたいのかもしれませんが、毎年100万円超を投じているであろうダイヤモンド修行僧からすると不満は拭いきれないかもしれません。
わたしなどまだ5年目のひよっこダイヤモンドだから分かりませんが、ミリオンマイラー様の心中は察して余りあります。
ダイヤモンド専用アップグレード
ダイヤモンド会員でもあまり利用することはないかもしれませんが、ダイヤモンド会員だけに許されたアップグレード特典というものがあります。
どういうものか。
それはアップグレード対象運賃(お高い)で航空券を買っていなくても、ダイヤモンド会員は通常の2倍のアップグレードポイントを使用することでセール運賃(お安い)もビジネスクラスやファーストクラスにアップグレード可能というチート能力です。
たとえば9万9800円の羽田-パリエコノミークラス(UG対象外運賃)に対して、アップグレードポイントを20ポイント(10ポイントの2倍)使用すれば本来30万円くらいするUG対象運賃でなくても片道はビジネスクラスにアップグレードできるというもの。
なんなら40ポイント使って往復ビジネスも可能。
前年度に大量のアップグレードポイントをもらっているダイヤモンド会員の場合はお得にもほどがあるシステムでしたが、これもアップグレードポイント終了に伴って消滅します。
これ以外にアップグレードポイントからスカイコインへの変換もアップグレードポイントが無くなるわけですから終了となり、単純な改悪ではなく多くの場面で影響が出る同時多発的な改悪といえます。
ANAからJALに乗り換える
プライオリティパスの改悪が聞かれて久しいですが、まさかのANAで大改悪。
ちょうど2年前、JALグローバルクラブへ入会するためのJGC修行が終了しました。

これもJGC修行僧にとっては特大の改悪だったと思いますが、かねてお伝えしているとおりJGCやSFCにあまり価値はない(個人の感想)ので、毎年修行が必要なダイヤモンド会員やJGP(JALグローバルクラブプレミア)には関係のない話でした。
ところが今回はANAダイヤモンド会員直撃の改悪であると言え、JALになくANAだけにあったアドバンテージたるアップグレードポイントの廃止はJALと同じ土俵に立つことを意味します。
ここで細かく書くにはあまりに内容が深いため簡単にまとめてみました。
| JAL | ANA | |
| アライアンス | ワンワールド 14社|170か国 | スターアライアンス 26社|195か国 |
| アップグレード(ビジネス) ヨーロッパ路線 | 33,000マイル | 28,000マイル |
| アップグレード(ビジネス) 東南アジア路線 | 20,000マイル | 18,000マイル |
| ダイヤモンド会員 必要ポイント | 10万ポイント※1 | 10万ポイント※2 |
| ビジネスクラスシート | スカイスイート A350-1000 | ザ・ルーム ザ・ルームFX |
※1 JMBダイヤモンドと同等のステータスであるJGCプレミアは8万ポイントで達成
※2 年間500万円以上のクレジット利用なら5万ポイントでダイヤモンド達成、年間400万円以上のクレジット利用なら8万ポイントで達成
アップグレードに必要なマイル
上表のとおりビジネスクラスにアップグレードする必要マイル数はANAのほうが少なめになっています。
ANAの場合2026年中はこれに加えてアップグレードポイントがあるわけですからアップグレードという観点で見ればJALでは歯が立ちません。
事実、私ぶりぶりマイラーがSFC→ANAダイヤモンドを選んだのもこれが最大の理由でした。
今後アップグレードに必要なマイル数の差がなくなってきてアップグレードポイントも無ければ、どちらを選ぶかは完全に好みの問題でありますがどちらがダイヤモンドになりやすいのか。
ダイヤモンド会員のなりやすさ
JALの場合ダイヤモンドは狙うものではなくなるべくしてなるものだろうと思っています。
というのも8万ポイント貯めればJMBダイヤモンドと同等のサービスを享受できるJALグローバルクラブプレミアになれるからであります。
10万ポイントに達する人は搭乗する必要があって乗っている人です。

そういうわけでJALの場合は1年で8万ポイント分搭乗すれば良いということであります。
対してANAは10万ポイント搭乗することが基本となります。
その差2万。
100%の積算率であればざっくり羽田-ロサンゼルス間を2往復程度の差です。
これは明らかに貯めやすい。
しかしJMBダイヤモンド(JGP)になりやすいということはマイルが貯まりにくいということの裏返しであり、貯まったマイルを使ってアップグレードする回数が減ってしまうことを意味します。
同様にANAでクレジット決済(400万+8万マイルまたは500万+5万マイル)を頼りにダイヤモンドになっても、アップグレードに必要なマイルがまったく貯まっていないという事態が容易に想像できてしまいます。
年間400万円以上決済する人であればJALもANAもダイヤモンド(JGP)のなりやすさは変わりませんが、どちらを選んでも修行中の全路線ビジネスクラスにアップグレードするというのは難しそうです。
おわりに
ここまで書いてみてANAがアップグレードポイントを廃止する結論は以下であると見ました。
マイルとお金を潤沢に持っていないアップグレード目当てのダイヤモンド会員はいらん。
です。
なぜそうするのかANAの目的は今のところ見えませんが、正規料金でビジネスクラスに乗ってくれるインバウンドの数が今後もいい感じで推移すると考えているように思えます。

ダイヤモンド会員のアップグレードのためにビジネスクラスの座席を確保するよりも売り上げになった方が良いのは当たり前なので当然の経営判断であり、むしろあまりお金を使わないけれど古い付き合いだから優遇するという古い日本的な慣習の排除は結果として競争力のある価格を生み、翻って利用者である私たちに恩恵があるのかもしれません。
とはいえ「はいそうですか」と簡単に納得できるものではなく、裕福ではないダイヤモンド会員のわたしには酷であることは間違いありません。
少なくとも今年1年間で貯まったアップグレードポイント(2026年4月付与)は2027年3月末まで生きているので、来年の上半期はANAダイヤモンド修行を継続しつつ今後JALグローバルクラブプレミアを目指すかANAダイヤモンドを引き続き目指すのか、はたまた上級会員をやめて年に一度正規料金で色々な航空会社のビジネスクラスに乗ってみるかを真剣に考えてみようと思います。

